【簡単に】NPO法人とは?収入や給料はどこから?元職員が解説

SDGsが話題になり、以前に増して「NPO」という言葉を耳にするようになりました。でも、「NPOってそもそも何なの?活動費の収入源は?」と思う方もいるのではないでしょうか。

そこでこの記事では「NPOとは何か」「NPOはどこから収入を得ているのか」を元NPO職員が解説します。

結論を先にお伝えするとNPOとは非営利活動をする団体のことの総称であり、収入源は寄付金、助成金、事業収益の3種類です。NPO職員の給料はこれらの収入の中から捻出されます。

この記事を読めば今よりもっと、NPOのことが深く理解できるようになります。詳しく説明していきますね。

この記事を書いた人
まゆさん

<プロフィール>

✔️ 民間企業からNPOへの転職経験あり

✔️ NPOでは団体の寄付集めに従事

✔️ NPO退職後も寄付者として関わる

目次

NPOとは非営利活動をする団体の総称、もしくは法人格を指す

People carrying donation and charity related icons

NPOという言葉は、以下2つの場面で使われています。

  • 「非営利活動」をする団体の総称として
  • NPO法人(正式には特定非営利活動法人)という法人格を取っている団体を呼ぶ時

以下で解説します。

NPOとは「非営利活動をする団体」を指す言葉

NPOとは非営利活動をする団体を指し、英語名Non-Profit Organizationの略です。非営利団体、と呼ばれることもあります。

どのような活動をしているのか

NPOの活動の特徴は公益性が高い点です。教育・文化、まちづくり、環境、人権、国際協力などあらゆる分野で社会貢献活動を行っています。

NPOという呼び名は、後ほど紹介するNPO法人(特定非営利活動法人)だけでなく、社団法人、財団法人、社会福祉法人、そして法人格*を持たないボランティアグループなどに対しても使われます。

*法人格:会社やNPOなどの団体に与えられる法律上の人格のこと。法人格を取得することで、個人名義ではなく、団体名義で銀行口座を開設したり、様々な契約ができる。

NPOだけでなくNGOという言葉もよく聞くと思います。NPOとNGOの違いについては以下の記事をご一読下さい。
» NPOとNGOの違いをわかりやすく解説!略称や法人格の有無を解説

「非営利」だからといって利益を出していけない訳ではない

非営利活動とは、利益を出していけないという意味ではなく、活動で得た利益の分配をしてはいけないという意味です。

株式会社のように利益を株主など出資者に分配したり、予定になかったボーナスとして構成員(理事、会員、職員など)に分配することはできません。つまり「儲かったお金をみんなで山分け」することはできないのです。

得た利益は団体の事業をより良くするために使われたり、次の期に繰り越されたりします。しかし、NPOは無償または無利益で「ボランティア活動」をする団体ではありません。

利益の分配ができないだけで、活動を通して利益を生むことも、職員が給料を得ることもできます。「利益の分配」でなければ職員がボーナスを受け取ることも可能です。予算編成当初から、給料連動、または固定額で支給額が設定されていれば問題ありません。

NPO法人とは「特定非営利活動法人」という法人格の一種

「NPO法人」は、ここまで解説してきたNPO(非営利団体)の中でも特定非営利活動法人という法人格を有する団体のことを指します。

NPO法人を取得するには、所轄庁(原則として主たる事務所が所在する都道府県)に申請をして設立の「認証」を受ける必要があります。認証後、登記することで「NPO法人」として活動ができるようになります。

NPO法人を取得するメリットは、

  • 社会的信用度が上がる
  • 税金が優遇される
  • 補助金や助成金制度が利用しやすい(法人格を持つ団体が申請条件の場合がある)
  • 公的機関と連携しやすい

などのメリットがあります。社会的信用度が上がる主な理由は、NPO法人には以下の義務が課せられているからです。

  • NPO法人は、すべての事務所に事業報告や財務報告書などの書類を備え置き、求めに応じて閲覧をさせなければならない
  • 事業年度終了後3ヶ月以内に、事業報告書などの書類を所轄庁へ提出しなければならない

さらに一定の条件を満たし、認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)として認められると、寄付者が寄付金控除を受けることができます。

しかし、非営利活動をするために取得する法人格は、必ずしもNPO法人である必要はありません。社団法人、財団法人、社会福祉法人など、各団体の活動の分野や性質に応じて取得されています。

※以降はNPO法人やNGOその他団体を取りまとめて「NPO」として表現します。

NPOの収入源は「寄付金」「助成金」「事業収入」の3種類

People volunteering and donating money and items to a charitable cause

NPOは無償で活動を行っているわけではないので、もちろん収入があります。収入源は大きく分けて以下の通りです。

  • 寄付金や会費
  • 助成金、補助金、受託費
  • 事業収益

これらの割合は団体によって異なります。1つずつ解説します。

寄付金や会費

正会員や賛助会員*から受け取った会費および企業や個人からの寄付です。

  • 会費:NPO法人に所属している会員が支払うお金
  • 寄付金:個人や企業から見返り無しにもらえるお金

会費や寄付金は、次の項目で解説する助成金や補助金などと違い、使用目的が限定されていません(団体が使途指定の寄付を設定している場合は例外)。つまり、団体がその時に必要だと思う活動に、すぐに使うことができます。助けが必要な人のためにすぐ柔軟に活用できる収入源といえます。

寄付には、毎月継続的に定額を寄付してもらう「継続寄付」と、思い立ったタイミングで単発で寄付できる「都度寄付」があります。

*正会員:法人の目的に賛同して入会した個人及び団体のこと。団体の総会において議決権がある。NPOにおいては「社員」と呼ばれるが一般的な企業の社員とは異なる(企業でいうところの社員はNPOにおいては職員と呼ばれることが一般的)。一方で賛助会員には議決権はない。

助成金、補助金、受託費

国や自治体からの助成金や、財団や企業などからの補助金もNPOの収入源の1つです。他に、国や自治体から委託された事業を請け負うことで交付される、受託費もあります。これらは原則返済不要なのでNPOにとってはありがたい収入源です。

しかし、申請書類を提出し、面接や審査を通過する必要があります。公募時から使い道が指定されていたり、もしくは申請時に提示した使途にしか利用できないといった面もあります。

事業収益

事業収益とは、「特定非営利活動に係る事業収益」及び「その他の活動に係る収益」です。

特定非営利活動に係る事業収益とは、その団体のメインの活動からの収入です。例えば、病児保育を展開しているNPOが保護者から徴収する利用料や、フェアトレード商品の販売はこれに相当します。

その他の活動に係る収益とは、その定款で示されたNPOの本来の目的とは違う事業から得た収入です。他に、受託費を使って行った事業で得た収入「受託事業収益」も事業収益に入ります。

とはいえ、途上国の貧しい子どもに教育や予防接種を提供する、といった受益者(支援を受ける人たち)が対価を払えない事業においては収入を得ることが難しく、先に紹介した寄付金・会費や助成金などに頼ることになります。

収入の割合はNPOの事業構造が「寄付型」か「事業型」かに左右される

People carrying arrows in the opposite directions

NPOという組織は支援活動に必要な費用をどのように賄うかによって大きく異なります。タイプを大きく2つに分けると、事業型と寄付型にわかれます。その特徴と違いをもとにNPOの仕事内容について説明していきます。

事業型のNPOの特徴

まずは事業型NPOの特徴から説明していきます。事業型は、社会課題を事業で解決し、その事業からの収益を得て活動するNPOです。このような団体は「事業収益」の割合が大きくなります。

例えば、障害者の就労支援を行っている団体の場合。モノを作って売るための技術支援から始まり、実際にモノを売ることで団体の収益のみならず、障害者の方に給料を支払うことで雇用を生むこともできるのです。

事業型のNPOのメリットは以下のようなものがあります。

  • 団体の活動自体が収入源となるため、事業をすることにフォーカスできる
  • 事業収益からの安定した収入が入ってくる

一方で以下のようなデメリットもあります。

  • 個々の業務が作業化されることで、社会の役に立っている実感が湧きにくい

寄付型のNPOの特徴

次に寄付型のNPOです。事業型同様、活動は社会課題を解決することに変わりはありません。違いは、事業が収益化できない点です。そのため「寄付」「助成金」が主な収入源となります。

例えば、ホームレス状態の人を支援する団体が炊き出しとして食事の無償提供サービスをする際、ホームレス状態の人が食事代を支払うことは財政的に難しいことがほとんどです。

このように、世の中に必要な支援事業ですが、サービスを受けた側が対価としてお金を支払えないことが多くあります。その際、団体の活動に賛同した第三者が寄付することで活動が成り立つのです。

寄付型でNPOを運営するメリットには以下のようなものがあります。

  • 団体のファンである寄付者が増えることで、活動や団体の認知を広げることができる
  • 活動内容の判断軸が収益化ではないことから、支援が必要な人に手を差し伸べることができる

一方、寄付型でNPOを運営するためのデメリットには以下のようなものがあります。

  • 寄付集め(ファンドレイジング)のための労力や人材が必要となる

NPO(非営利団体)の給料が安い理由は「規模が小さいから」

The finance department employees are calculating the expenses of the company's business.

NPOの給料は、前述した収入の一部から支払われます。行政の資料によると、NPOの正規職員の平均年収は173.5万円から301.1万円で、非正規職員の平均時給は759円から1059円です。

人数の規模で民間企業の年収と比較すると、民間企業は362.3万円から393.7万円に対して、NPO法人は267.2万円から335.5万円と低い傾向にあるのが現状です。

参考:労働政策研究報告書 No.12 23ページ 第4-5-1表 平均年収と平均賃金

なぜNPOの給与は低いのか

NPOの給与が低い理由は、予算規模が小さいことが要因です。

外務省が発行するNGOデータブック2021*によれば、国際協力分野のNPOの年間予算は1億円未満の団体が全体の75%。またその中でも、1,000万円未満の団体は44%を占めています(参考:外務省 NGOデータブック2021)。

また、NPOの予算は管理費(人件費や事務費など)の割合を10〜20%に抑えるようにすることが一般的とされています。ちなみにこの水準は民間企業と同じぐらいの水準なので、結局は予算規模が小さいことが根本的な理由です。

NPOのために私たちにできること

We can do it. Feminine concept and woman empowerment design for banners and posters

ここまで述べてきたようにNPOは社会問題の解決のために活動をしています。今私たちにできることを紹介します。

寄付をする

社会を良くしようと奮闘するNPOに対して、寄付で支援することができます。寄付金は使途が自由であり、団体にとって非常に大きな応援の一つとなります。

例えば、国際協力をする団体の一つに「ワールド・ビジョン・ジャパン」があります。世界の困難に直面する子どもたちを支援しており、手紙を通じてこどもと直接交流することができます。特にこれから寄付を始めたい、という方におすすめの団体です。

» ワールド・ビジョン・ジャパンについて詳しくみる

転職して働く

事業を拡大しているNPOでは正規職員を募集しています。NPOで働くのが向いている人や求人情報の探し方について以下の記事で詳しく解説しています。ぜひチェックしてみてくださいね。

» NPO法人で働くには?向いている人は?現役職員が徹底解説

ボランティアとして関わる

転職まではハードルが高い、という方には今の仕事をしながらボランティアとして関わることもおすすめです。団体ではボランティアを継続的に募集しているところも多いので、気になる団体があれば直接問い合わせてみましょう。

まとめ:NPOは非営利活動をする団体のこと!

最後にこの記事の内容をまとめます。

  • NPOとは非営利活動をする団体のこと。非営利とは収入、収益を得てはいけないという意味ではない
  • NPO法人、社団法人、財団法人、社会福祉法人、法人格のないグループなど、NPOの形はさまざま
  • NPOの収入源は寄付金、助成金、事業収益などさまざまで、割合は団体による

非営利団体といっても収入は得れますし、利益は出せます。NPOに関わりたいと思う方の参考になれば嬉しいです。

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この記事を書いた人

新卒で製造業、スポーツ業界を経てNPO正職員。東日本大震災直後の開発支援や、団体のファンドレイジングイベントに従事。退職し旅に出た後、旅行関連企業に勤務し現在はフリーランス。
勤務していたNPOには、退職後もボランティアや寄付者として関わり続けている。

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